Valve社『Steam Frame』発表! VRChat利用を想定したQuest 3とのスペック徹底比較
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- 11月14日
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更新日:11月17日
2025年11月13日、Valveは新型のVRヘッドセット「STEAM FRAME」を発表しました。本機は、同社の「Valve Index」の後継機種と位置付けられ、PC接続不要のスタンドアロン動作と、高性能PCと接続するPCVRストリーミングの両方に対応するハイブリッドモデルです。
発売は2026年初頭を予定しており、価格は1000ドル未満を目指すとしています。本記事では、VRChatユーザーの視点から、その詳細なスペックと、競合機種となる「Meta Quest 3」との比較を客観的に分析します。
「STEAM FRAME」の概要:スタンドアロンとPCVRの両立

「STEAM FRAME」は、PCや外部センサー(ベースステーション)なしで動作するスタンドアロン型VRヘッドセット(※)です。OSにはValve独自の「SteamOS 3」を搭載し、プロセッサーには「Snapdragon 8 Gen 3」、メインメモリ(RAM)は16GBを備えています。
これは、多くの既存スタンドアロン型VRヘッドセットで採用されているチップセットよりも高性能であり、VRゲームだけでなく、Steamライブラリの非VRゲームも単体で動作可能としています。
一方で、従来のPCVR(PC接続型VR)ヘッドセットとしての機能も強化されています。付属の「プラグアンドプレイ6GHzワイヤレスアダプター」を使用することで、PCと安定した無線接続を確立。VRChatを含む高負荷なPCVRゲームをストリーミングでプレイ可能です。
※スタンドアロン型: PCなどの外部機器に接続せず、VRヘッドセット単体で動作する方式。
VRChat利用を想定した「Steam Frame」と「Quest 3」の比較

「STEAM FRAME」は、スタンドアロンVRヘッドセット市場において「Meta Quest 3」の直接的な競合製品となります。VRChatの利用を想定し、両者の主要スペックを比較します。
主要スペック比較表
項目 | STEAM FRAME (Valve) | Meta Quest 3 (Meta) | 備考 |
プロセッサー | Snapdragon 8 Gen 3 | Snapdragon XR2 Gen 2 | STEAM FRAMEが高性能 |
RAM | 16 GB (LPDDR5X) | 8 GB (LPDDR5) | STEAM FRAMEが2倍の容量 |
解像度 (片目) | 2160 x 2160 | 2064 x 2208 | STEAM FRAMEが約2.4%多い |
レンズ | パンケーキレンズ | パンケーキレンズ | 同等 |
リフレッシュレート | 72~120Hz (144Hz実験モード) | 最大120Hz | ほぼ同等 |
アイトラッキング | 搭載 | 非搭載 | STEAM FRAMEの大きな利点 |
フィンガートラッキング | 搭載 | 非搭載 | STEAM FRAMEの大きな利点 |
パススルー | モノクロ (拡張ポート有) | フルカラー | 現状はQuest3が優位 |
トラッキング | インサイドアウト (4カメラ) | インサイドアウト (4カメラ+深度センサー) | 同等の方式 |
重量 | 440 g | 515 g | STEAM FRAMEが75g軽量 |
PC接続 (無線) | Wi-Fi 7 / 6GHz専用アダプタ付属 | Wi-Fi 6E (Air Link / VD) | STEAM FRAMEは安定性重視の構成 |
OS | SteamOS 3 | Meta Horizon OS | システムが異なる |
1. スタンドアロン性能(SoCとRAM)
「STEAM FRAME」(以下、SF)は、「Quest 3」(以下、Q3)より高性能な「Snapdragon 8 Gen 3」と、2倍の16GBのRAMを搭載しています。
VRChatは、スタンドアロン環境(Quest版)においてもアバターやワールドの読み込みでRAM容量を大きく消費します。SFの16GBという大容量RAMは、Q3の8GBと比較して、より多くのユーザーが表示された際のクラッシュ耐性や、ワールドの安定性に大きく寄与すると考えられます。プロセッサーの性能向上と合わせ、スタンドアロンでのVRChat体験はSFがQ3を明確に上回る可能性があります。

2. アイトラッキングの有無
SFはアイトラッキングを標準搭載し、Q3は非搭載です。これはPCVR利用時において自己表現に大きな差が付き、この機能のためだけに導入することも十分に検討できます。
ただし、SFはマウストラッキングに非対応のため、顔全体のトラッキングが出来ないことには留意したいです。
SFにはフェイシャルトラッキング想定と思われる拡張スロットも取り付けられているため、今後のマウストラッキング対応にも期待できます。
3. パススルー(MR機能)
現実の映像をヘッドセット内に表示するパススルー機能において、Q3はフルカラーに対応し、高品質なMR(複合現実)体験を提供します。一方、SFは現状モノクロパススルーのみに対応しています。
この点においてはQ3が明確に優位ですが、SFにはフロント拡張ポートが用意されており、将来的なカラーカメラモジュールの追加といった拡張性が示唆されています。
4. 重量と装着感
SFの重量は440gであり、Q3の515gと比較して約15%軽量です。長時間のVRセッションにおいて、この重量差は首への負担軽減に大きく影響するため、SFの利点と言えます。
5. PCVR接続の安定性
Q3が一般的なWi-Fi 6E経由の接続(Air Linkなど)であるのに対し、SFはPCVRストリーミング専用の「6GHzワイヤレスアダプター」が付属します。電波干渉の少ない6GHz帯を占有することで、VRChatのような大容量データ通信が常時発生する環境でも、Q3の一般的なWi-Fi接続よりも理論上安定した、低遅延の接続が期待できます。

SteamOSで「PC版VRChat」が動作する可能性
本機はOSに「SteamOS 3」を搭載しています。このOSは「Proton(プロトン)」および「FEX」と呼ばれるエミュレーション技術(※)を用い、ARMベースのSnapdragon上で、従来のPC(x86)向けWindows/Linuxアプリケーションを実行可能としています。
※エミュレーション: あるコンピューター(この場合はARM)で、異なる設計のコンピューター(x86)用のソフトウェアを実行させる技術。

この技術により、理論上はPCからのストリーミング(転送)ではなく、Steam Frame単体で「PC版VRChat」が動作する可能性が示唆されています。
しかし、この機能の活用には、VRChat特有の2つの大きな課題が存在すると考えられます。
1. パフォーマンスの現実的な限界
「PC版VRChat」は、最適化されたQuest版(Android版)とは異なり、非常に高負荷なソフトです。
「Steam Frame」のSnapdragon 8 Gen 3は、既存のスタンドアロン機より高性能であるとはいえ、PC(x86)用の高負荷なアプリケーションをエミュレーション経由で快適に動作させるには、処理能力に限界があると予想されます。
仮に動作したとしても、その用途はアバターやワールドの簡易的な検証、あるいは少人数のみのフレンドインスタンスでの利用など、限定的なものになる可能性が高いと推測されます。
2. 外部ソフトウェアとの互換性
VRChatのPCVR環境は、多くの外部ソフトウェアや機材との連携によって成立しています。
例えば、OSCを利用するフルトラッキング機材や各種ギミックV睡時に使用される自動暗転ソフトなど、これらはWindows OSの環境を前提として開発・動作しているものが大半です。
「Steam Frame」が搭載するSteamOS(Linuxベース)環境では、これらの外部ツールが正常に動作しない可能性が極めて高いと考えられます。
デバイスの立ち位置に関する考察
上記の課題、および1000ドル未満という想定価格帯を踏まえると、「Steam Frame」は、PCを所有していないスタンドアロンVRChatユーザー(単機勢)の乗り換え先として最適とは言い難い側面があります。
むしろ、既に高性能なゲーミングPCを所有しているユーザーが、メインのPCVR環境を補完する「高機能なワイヤレス補助デバイス」として、あるいは出先でアバターの確認やSteamライブラリのゲームを遊ぶためのサブ機として活用する、といった用途により適していると考えられます。

PCVRストリーミングを支える新技術
PCVRとしてVRChatを利用するユーザーにとって、接続の安定性と描画品質は最重要項目です。
6GHzワイヤレスアダプターとWi-Fi 7
本機には、PCVRストリーミング専用の「6GHzワイヤレスアダプター」が付属します。
6GHz帯(※)は、従来の2.4GHzや5GHz帯と比較して電波干渉が少なく、高速な通信が可能です。「STEAM FRAME」本体もWi-Fi 7に対応しており、低遅延で安定した無線環境が期待できます。
※6GHz帯: Wi-Fi 6EやWi-Fi 7で利用可能になった新しい周波数帯。
アイトラッキングと「中心窩ストリーミング」
「STEAM FRAME」は、ユーザーの視線を追跡する「アイトラッキング(※)」機能を標準で搭載しています。
これを活用した新技術が「中心窩ストリーミング(Foveated Streaming)(※)」です。これは、ユーザーが見ている中心部分の映像は高解像度で、視界の周辺部分は解像度を抑えてPCからストリーミング(伝送)する技術です。
Valveによれば、これにより画質と実効帯域幅が10倍以上向上するとしており、無線PCVR環境での描画品質とパフォーマンスの大幅な改善が見込まれます。
※アイトラッキング: ユーザーの眼球の動きを追跡する技術。※中心窩ストリーミング: ユーザーの視線(中心窩)が向いている部分の映像データを優先的に高解像度で伝送し、それ以外の部分のデータ量を削減する技術。

ディスプレイと光学系
ディスプレイには、片目につき2160 x 2160解像度のLCDパネルを2枚搭載しています。
また、レンズには「パンケーキレンズ(※)」を採用しています。これにより、薄型・軽量化と、鮮明な視界の両立が図られています。リフレッシュレートは72Hzから120Hzに対応し、実験的モードとして144Hzも搭載予定です。

※パンケーキレンズ: 従来のレンズ(フレネルレンズ)より薄型・軽量化を実現する光学レンズ。
トラッキング方式
トラッキング(位置追跡)には、4つのモノクロカメラを使用した「インサイドアウト方式(※)」が採用されています。
これにより、Valve Indexでは必須であったベースステーション(※)の設置が不要となり、セットアップの簡便性が大幅に向上します。暗所でのトラッキングに対応するため、赤外線照明も搭載しています。
ハンドトラッキングは現時点の資料では非対応とされています。
※インサイドアウトトラッキング: ヘッドセット本体に搭載されたカメラで周囲の環境を認識し、自身の位置や動きを追跡する技術。※ベースステーション: 室内に設置し、赤外線レーザーなどでヘッドセットやコントローラーの位置を外部から高精度に追跡する機器(Valve Indexなどで使用)。
コントローラーとその他の機能
Steam Frame Controller、フィンガートラッキングの搭載
付属する専用コントローラー「Steam Frame Controller」は、従来のVRゲーム操作に加え、十字キーやABXYボタンといった、非VRゲーム(平面のゲーム)に必要な入力系統もすべて搭載しています。
これにより、VR空間内でSteamライブラリの通常ゲームをプレイする際も、シームレスな操作が可能です。
単三電池でバッテリー交換ができ、40時間のバッテリー持続時間が可能である上、どのVRコントローラーでも悩みの種であるスティックの弱さについては、『磁気サムスティック』が採用されており、耐久性が向上が期待できます。
中でも一番の魅力は先代同様、静電容量式フィンガートラッキングが実装されている点です。




まとめ
「STEAM FRAME」は、Valve Indexの正当な後継機として、ベースステーション不要の利便性と、Quest 3を上回るスタンドアロン性能、そしてアイトラッキングや6GHz帯無線接続といったPCVR環境を強化する最新技術を併せ持つデバイスです。
発売は2026年初頭と少し先ですが、NuNuPCとしても、VRChat向けゲーミングPCの推奨スペックや、関連デバイスの動向に大きな影響を与えるものとして、引き続き詳細な情報を注視していきます。
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